最終更新日 2024/11/11
業務委託とフリーランスの違いがわからなくてお困りではないでしょうか。
業務委託とフリーランスは一緒に使われることが多い言葉ですが、意味がまったく異なります。
それぞれの違いを把握しておきましょう。
この記事では、業務委託とフリーランスの違いや、業務委託するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
フリーランスを業務委託で採用する際の注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
️業務委託とフリーランスの違いとは
業務委託とフリーランスにはどのような違いがあるのでしょうか。
詳しく解説します。
業務委託とは「契約方法」のこと
業務委託とは、自社業務を外部の個人や法人に依頼する契約形態のことです。
発注側が提示した業務内容や報酬の条件に、受注側が合意すると契約成立となります。
雇用契約ではないため、発注側が受注側の休日や労働時間などを拘束できません。
契約書を作成するのが一般的ですが、口約束などでも契約は成立します。
業務委託は、「委任契約」「準委任契約」「請負契約」の3種類に分類されます。
委任契約とは
委任契約とは、法律行為に該当する業務を委託することです。
業務を遂行すれば契約完了となるため、請負契約のように成果物を提出する必要がありません。
法律行為とは、意思を表明することで何らかの権利や義務が発生するような行為のことです。
部屋の賃貸借や遺言書の作成、総会での決議などが該当します。
準委任契約とは
準委任契約とは、法律行為ではない事務を委託することです。
委任契約と同様、契約の履行に成果物の提出は必要ありません。
法律行為ではない事務とは、意思表示をしても法的な効果を持たない事実行為のことです。
契約書の作成などの一般的な事務作業のほか、コンサルティングやセミナーの講師などさまざまな業務が該当します。
請負契約とは
請負契約とは発注側の依頼をもとに、受注側が成果物を完成させ報酬を得る契約のことです。
仕事の完成が契約履行の条件となっているため、受注側が発注側に成果物を提出しなければなりません。
フリーランスのライターや大工、デザイナーなどが該当します。
フリーランスは「働く方法」のこと
フリーランスとは、特定の個人や法人と契約を結んで仕事をする人や働き方のことです。
契約方法ではないため、業務委託とはまったく意味が異なります。
ただし多くのフリーランスは業務委託契約を締結して仕事を受注するため、両者はまったく無関係というわけではありません。
「フリーランスとして仕事を受けるのに業務委託契約を結んだ」というような使い方をします。
フリーランスを業務委託で採用するメリットとは
フリーランス業務委託で採用すると、具体的にどのような利点があるのでしょうか。
フリーランスと業務委託契約を結ぶメリットについて詳しく解説します。
より専門性を活かした業務を依頼できる
フリーランスは、専門的なスキルや知識をもとに業務を遂行できる人達です。
そのため業務委託を活用すると、必要に応じて専門業務を依頼できます。
専門性を持った人材を確保するのは簡単ではありません。
高度な人材を採用するにはそれなりの広告費やコストをかける必要がありますし、運よく人材を確保できたとしても、常に退職の危険性がつきまといます。
業務委託は、専門家の知識やスキルを活用できる便利な契約形態です。
変動費で委託できる
フリーランスを業務委託で採用すると、人件費を変動費として管理できるようになります。
雇用契約で人材を採用すると、社員の給料や社会保険料、福利厚生費などの固定費がかならず必要です。
社員を有効に活用できてるうちはまだよいですが、閑散期になり暇な社員が増えると、毎月支払う固定費が利益を圧迫する要因になります。
業務委託を活用すれば、繁忙期の忙しい時期にフリーランスを雇い、暇なときに社内リソースだけで業務を実施するといった臨機応変な対応が可能です。
申請手続きがいらない
社員を雇う雇用契約の場合は、会社が社員の給料から必要な税金を差し引いて納めます。
会社側が確定申告に必要な作業を代行するため、申請手続きに手間がかかることも多いです。
例えば医療費などを多く払い過ぎた従業員は、年末に申請書を会社に提出して年末調整を行います。
その際、提出された書類のチェックや、提出書類の催促連絡などを会社が行うため、人件費が必要以上にかかることも多いです。
業務委託ではフリーランス自身で確定申告を行うため、会社側が源泉徴収したり年末調整したりする必要がありません。
会社側は確定申告に関する業務を大幅に削減できます。
契約をすぐに解除できる
日本は労働者の権利が守られており、問題のある社員がいても簡単に退職させることができません。
日本の法律では、合理的な理由があり社会通念上相当な場合に限り、労働者を解雇できるとされています。
企業側が強引に辞めさせようとすると不当解雇になるため注意が必要です。
一方フリーランスは労働基準法が適用されないため、相応の事情があれば発注側が契約をすぐに解除できます。
受注側の業務対応に著しい問題があれば、裁判所を通して損害賠償を請求することも可能です。
️フリーランスを業務委託で採用するデメリットとは
フリーランスを業務委託で採用すると、色々なメリットがあることがわかりました。
では業務委託を行うことによって、発注側にデメリットが生じることはないのでしょうか。
フリーランスを業務委託で採用するデメリットについて詳しく解説します。
質の保証はない
フリーランスと言っても、どれだけ優秀な仕事をしてくれるかは人それぞれです。
元々それほどスキルが高くないフリーランスを採用したり、コミュニケーション不足によって発注側の意図がよく伝わっていなかったりすると、成果物の質も低くなる可能性があります。
また、コミュニケーションのトラブルや条件面での食い違いなどによって、肝心なときにフリーランスとの関係が切れることもあります。
社内育成ができない
ノウハウや知識は、業態や業種に関わらず、実際に業務を遂行することで蓄積されていきます。
継続的に業務を実施してトライ&エラーを繰り返すことでより洗練されることも多いです。
一方フリーランスに業務委託すると、企業が業務に携わる機会がなくなるため、社内にノウハウや知識が蓄積されません。
社内人材が育ちにくくなるため、業務委託によって人材を確保できないときに、自社で業務を遂行することが難しくなります。
コミュニケーション不足になる可能性がある
業務委託は、雇用契約のように発注側と受注側の間に指揮命令関係がありません。
受注側が休日や労働時間、仕事場所などを自由に決められるため、受注側と発注側でコミュニケーション不足になる可能性があります。
コミュニケーション不足を解消しようとして、発注側が受注側の労働環境に注文をつけるのはよくありません。
発注側の要求が強すぎると偽装請負とみなされ、懲役や罰金刑を受ける可能性があります。
業務委託でコミュニケーション不足が発生するのは、コミュニケーション環境が整備されていないことが原因のひとつです。
ビジネスチャットツールやWeb会議システムなどを活用して、1対1で対話できる環境を整えましょう。
️フリーランスを業務委託で採用する場合の注意点
フリーランスの業務委託で採用する場合の注意点やポイントについて詳しく解説します。
偽装請負にならないように気を付ける
フリーランスを業務委託で採用する場合に問題になるのが「偽装請負」です。
業務委託として採用したのに実態は偽装請負だった、ということにならないように、どのようなことが偽装請負に該当するのかしっかりと確認しましょう。
偽装請負とは
偽装請負とは、本来請負契約として業務を委託しているのにも関わらず、雇用契約を結んだ労働者のようにフリーランスを働かせることです。
外観上は請負契約になっているのに、実際はフリーランスの休日や労働時間などを拘束しているケースが該当します。
偽装請負は、発注側の悪意で発生することが多いです。
雇用契約を結ぶと会社が労働者の社会保険料を半分支払わなければならないため、請負契約のように偽装して社会保険料の負担を免れるとする企業が問題になっています。
偽装請負は、明確な法律違反です。
国から偽装請負とみなされると、労働者派遣法違反により懲役もしくは罰金刑が課されます。
フリーランス業務委託で採用する場合は、偽装請負にならないようにしましょう。
偽装請負にならないために
業務委託が偽装請負とみなされないためには、発注企業とフリーランスの間で指揮命令関係を構築しないことが大切です。
特約などがない限り、発注側がフリーランスの労働時間や仕事場所、休日などを拘束しないようにしましょう。
️まとめ
業務委託とは「契約方法」のことです。
「委任契約」「準委任契約」「請負契約」の3種類に分類されます。
一方フリーランスは「働く方法」のことです。
契約方法とは関係ないため、業務委託とは意味が大きく異なります。
そのため「フリーランスは仕事を受ける時に業務委託契約を結ぶ」というのが正しい認識です。
フリーランスを業務委託で採用する場合は、メリット・デメリットを踏まえたうえで行動することが大切です。
自社の業態や社内リソースの状況などを考慮して、どのような業務を外部委託するのか決めましょう。
偽装請負には十分に注意しつつ、フリーランスを業務委託で採用してください。
パートナー企業開発部門を経て、金融業界向けコンサルティングセールス業務に従事。
その後、ヘッドハンティングされWeb系スタートアップ企業の取締役等を歴任。
Webコンサルティングやメディアを運営するアークワードコンサルティング社を創業。