【会社顧問とは?】相談役・参与との違い、役割、種類、契約、報酬、まで解説!

最終更新日 2023/11/15

「会社の顧問」といった役割をニュースなどで見聞きしたことのある人は多いのではないでしょうか?実際、「顧問」という名称は一般的に知られていますが、その役割や種類については具体的に知らないという人が多いのではないでしょうか?実は、顧問には内部顧問と外部顧問の2種類があり、また顧問に似た役割として「相談役」「参与」なども存在します。

今回は、このように複雑な会社の顧問について、具体的な役割を紹介します。

顧問とは?

顧問とは、一言でいうと、「会社の経営を補佐する人」のことです。

豊富な経験、知識をもとに事業の改善に関してアドバイスをしたり、実際に実務的な補佐を行ったりすることが一般的です。

その役割から、「ブレーン」「アドバイザー」といった名称で呼ばれることもあります。

大企業から中小企業まで、顧問を活用して事業の改善に取り組んでいる会社は多いです。

また、代表取締役・取締役・監査役などと異なり、「会社法で定められた役職」ではなく、あくまで任意で設置されるポジションであるのも特徴です。

このため、基本的には経営権を持たないということになりますが、会社内での規定によっては、顧問が強力な意思決定をできるところもあるのが現状です。

顧問には、「内部顧問」と「外部顧問」の2つが存在します。

内部顧問

内部顧問とは、「内部の人間」すなわち社長や取締役などの重役ポジションにいる人が顧問を兼務したり、退職後に顧問となるケースです。

内部顧問のメリットとしては、長年会社にいた人であることから社内事情に精通しており、社内の人脈も広いため、迅速かつ精度の高いアドバイスが期待できるという点です。

一方、退職した会社の重役が内部顧問を務めることで、事実上公認の重役が顧問の元部下というような構造になってしまい、顧問による院政が行われやすいというデメリットもあります。

こうしたデメリットを危惧し、内部顧問という制度を廃止したり、内部顧問の権限を制限するような規制を設ける会社も増えてきているという特徴があります。

外部顧問

外部顧問とは、「外部の人間」すなわち社外かつ実績の高い人材を顧問として迎え入れる形式です。

内部顧問に関しては社長や取締役など、内部の経営人材が務めるケースが多いですが、外部顧問に関しては経営人材だけでなく、弁護士や税理士など、各専門領域のスペシャリストが務めるケースも多いという特徴があります。

外部顧問の特徴としては、外部の人間が持つ人脈をフルに活用できること、外部ならではの客観的な視点でのアドバイスが期待できることなどが挙げられます。

また、外部顧問は必要なときに非常勤といった形で業務を依頼できるので、常に内部で雇用しておくよりも人件費が安く済むというメリットがあります。

外部顧問には、具体的に以下のような種類があります。

経営顧問

経営顧問の役割は、企業の中長期的な経営課題を会社の経営陣と一緒に分析、深掘りし、具体的な対策をアドバイスすることです。

内部顧問と同様、外部の社長や取締役などを経験してきた経営人材が選ばれる傾向にあります。

また、経営者でなくても、中小企業診断士や経営コンサルタント経験者など、経営に関する専門知識を有した人が選ばれることも多いです。

顧問税理士

顧問税理士の役割は、税務や金融全般に関するアドバイスを行うことです。

例えば企業が事業成長に向けて借り入れを行う際、どの金融機関を使うべきか、またその金融機関を使って借り入れを行うと今後のキャッシュフローや税金額はどのようになるか、などを予測してアドバイスします。

また、節税方法に関するアドバイスも行います。

顧問弁護士

顧問弁護士の役割は、会社経営に関する様々な法律問題についてのアドバイスを行うことです

リーガルチェックを定期的に行うことで、取引先からの訴訟を事前に防いだり、社内のトラブルを解決に導きます。

また、顧問弁護士が直接契約書や社内の就業規則に関するリーガルチェックを行うこともありますが、こうしたリーガルチェックが顧問弁護士がいない状態でも適切に行われるような体制の構築を行うこともあります。

法務顧問

法務顧問は、会社の法務関係・コンプライアンス関係全般に関するアドバイスを行います。

顧問弁護士よりもより具体的な部分でのアドバイスが多く、個人データの取り扱いや処理方法などに関する対応を行います。

司法書士や行政書士、社会保険労務士などが法務顧問に就任するのが一般的です。

労務顧問

労務顧問は、社内の人事制度や労務全般に関してアドバイスをする顧問です。

近年パワハラやセクハラに対するコンプライアンス意識の高まりから、こうした労務顧問を導入してはたらく環境づくりの整備を行う企業が増えてきています。

社会保険労務士や行政書士が就任するのが一般的です。

技術顧問

技術顧問は、社内のIT技術の向上のためのアドバイスを行う役割です。

特に、近年IT技術の発展により取り扱う情報量が増えている中で、セキュリティ面での技術向上は多くの企業で課題になっています。

一般的に、IT技術に卓越しており、かつエンジニア組織や企業の体制構築にも知見がある人材を登用するのが一般的です。

相談役・参与との違い

続いて、企業の顧問と、相談役・参与との違いを解説します。

【顧問との違い①】相談役

相談役と顧問の違いは、明確ではありません。

なぜなら、どちらも経営や特定の領域に対してアドバイスを行うという点で共通であり、かつどちらも会社法で定められた役職ではないため直接経営権を担うことがないからです。

一方、違いとしては、顧問の方がより特定の領域に対してアドバイスを行うという側面が強い一方で、相談役は会社の社長や取締役が退任後に着くケースがほとんどであるということです。

社長や取締役の退任後に、実際に特定の領域でアドバイスを行い事業にコミットするのが内部顧問、より全体的なアドバイスをしたり、名誉職的な意味合いが強いのが相談役、といえるでしょう。

【顧問との違い②】参与

同様に、参与と顧問の違いも明確ではありません。

会社によって細かい違いはありますが、一般的に参与とは、会社内の専門分野で経営者と同等レベルであると認定された人のことを指します。

このため、参与の方が顧問よりも直接的に経営に関わることができるというのが特徴です。

部長以上の上級管理職が、退任後に参与に就任するケースが多いとされています。

顧問契約とは

内部顧問・外部顧問に関わらず、顧問を活用する際は、雇用契約ではなく、委任契約や業務委託契約を結ぶのが一般的です

あくまで正社員ではなく、退職後に会社として意見を求めている、という立ち位置からこうした契約が用いられることが多いです。

ただ、委任契約や業務委託契約も一通りではなく、直接顧問と契約を結ぶ直接契約と、仲介業者を利用する場合の2通りが存在します。

直接契約の場合

顧問と直接契約を結ぶ場合、委任契約もしくは準委任契約を締結するのが一般的です。

報酬などを明記した顧問契約書を作成します。

直接契約をするのは、すでに企業と顧問の面識があるケース、すなわち内部顧問の場合が多いです。

仲介業者を利用する場合

外部顧問の場合、会社の経営陣のつながりでいきなり直接契約を結ぶ場合もありますが、多くの場合仲介業者を利用します

仲介業者を利用する場合、仲介業者に紹介料のみを払って直接契約を結ぶ場合と、仲介業者と企業が業務委託契約を結び、仲介業者と外部顧問が業務再委託契約を結ぶという場合が存在します。

顧問報酬の相場

顧問報酬の相場は、常勤か非常勤か、また経営顧問かその他の顧問かなどによって大きく異なります。

報酬の相場

各顧問の報酬の相場に関しては、以下の通りです。

【報酬の相場】内部顧問の場合

産労総合研究所による「役員報酬の実態に関するアンケート調査」によると、内部顧問の場合、顧問の平均年間報酬は、非常勤の顧問で498万円、常勤で675万円という結果になりました。

このため、内部顧問や経営顧問は、基本的にはその関与度にしてはかなり高い報酬をもらっていることがわかります。

【 参考:役員報酬の実態に関するアンケート調査 】

【報酬の相場】弁護士の場合

弁護士の場合は、基本的に月額で報酬額が決まり、月5万円前後が相場と言われています。

かつて、日本弁護士連盟により、企業と弁護士が顧問契約を結ぶときの上限金額が5万円というルールが制定されていたことから、その名残で5万円程度が相場になっています。

【報酬の相場】税理士の場合

税理士の場合は、顧問契約をする企業の年商によって異なるものの、基本的には月額3万円前後が相場になっています。

顧問報酬は経理上では「支払報酬」

雇用報酬は、経理上は「支払報酬」として処理されることが一般的です。

ただし、内部顧問で役員を兼任している場合には役員報酬として処理することが望ましいとされています。

まとめ

顧問とは、企業の経営に対してアドバイスをしたり、補佐をしたりする役割です。

会社の取締役クラスが退任後に顧問となる内部顧問と、外部の専門家と契約を結ぶ外部顧問の2種類があります。

顧問は、相談役や参与と似た役割を持ちますが、相談役よりも顧問の方がより専門的・実務的である点、参与は経営に関する意思決定権がある一方で顧問にはない点などで異なっています。

顧問の報酬は内部顧問か外部顧問かなどによって異なりますが、内部顧問や経営顧問は報酬が高くなりやすい一方で、弁護士顧問や税理士顧問は月額で少額の契約を結ぶことが多いです。

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