最終更新日 2023/11/15
近年、デジタル技術を活用して業務効率化やイノベーションをおこなっていく「DX」に対するニーズが高まっています。
しかし、今までそこまでデジタル技術に親しみがなかった企業にとっては、何から進めていけば良いかわからない、ということも多いでしょう。
特に直近はDXにおいてクラウドが必須などと言われていますが、本当に必須かどうか判断がつきかねる場合もあるかもしれません。
今回は、DXにおいてクラウドの活用をどのように進めていくべきか迷っている企業の方向けに、クラウド導入のメリット・デメリットや実例を紹介します。
目次
DX推進にはクラウド活用が必須!
そもそも、なぜDXにクラウドが必要なのでしょうか。
必要性があるかどうかを整理するために、DXやクラウド化の概要を解説します。
DXとは
DXとは、「デジタルトランスフォーメーション」の略語です。
経済産業省が制定する「デジタルトランスフォーメーション( DX )を推進するためのガイドライン」では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」という風にDXを定義しています。
単なるデジタル技術の導入をすることではなく、デジタル化による業務効率化や文化の変革を行うことで、イノベーションを起こしていく、というのが目的になっています。
クラウド化とは
クラウド化とは、簡単にいえば実際に存在するローカル環境ではなく、インターネット上の仮想環境にデータベースや開発環境、ソフトウェアなどを設置することを指します。
クラウド化を進めることで、多くのソフトウェアやストレージなどを簡単に管理できるようになり、社内でのデータの共有なども容易になります。
また、利用の形態によって柔軟に料金が変わるサービスも多いため、例えばストレージサービスを数多く使った時はその分費用がかさむものの、使っていない時は費用を安く抑える、といったことも可能になります。
また、クラウドサービスを利用する場合、メンテナンスや運用の全てをクラウドの提供企業が行うため、自社での工数がかからないのもメリットです。
一方でクラウド提供企業がシステム障害を起こした場合大きな影響が出てしまったり、セキュリティ上の懸念があったりとデメリットも存在します。
クラウドの種類
続いて、具体的なクラウドの種類を紹介します。
クラウドは、その提供する機能によって以下の3つに分けられます。
・SaaS
SaaSとは、Software as a Serviceの略で、ひとことでいえばアプリやソフトウェアなどをインストールすることなくクラウド上で動作させるものです。
GoogleやSalesforceなどのプロバイダーがSaaSを提供しており、日本の会社や学校でも非常によく使われるGoogleスプレッドシートやGoogleスライドなどの機能もSaaSに該当します。
・PaaS
Paasとは、Platform as a Serviceの略で、ひとことでいえばアプリの開発環境をクラウド上で提供する機能のことです。
Google App EngineやMicrosoft AzureなどがPaaSに該当します。
・IaaS
IaaSとは、Infrastructure as a Serviceの略で、ひとことでいえばメモリやストレージ、CPUなどのインフラ、コンピューターリソースをクラウド上で提供する機能のことです。
Google Compute EngineやAmazon Elastic Compute CloudなどがIaaSに該当します。
また、上記で紹介したSaaS、PaaS、IaaSなどのクラウドは、別軸でプライベートクラウド、パブリッククラウド、ガバメントクラウドの3つに分類することもできます。
・プライベートクラウド
プライベートクラウドとは、自社しか利用できない専用のクラウドのことです。
専用のクラウドを自社でつくることで高度なセキュリティと用途に応じたカスタマイズが担保しやすくなる一方で、自社でプライベートクラウドを構築することは技術的難易度が高く、工数がかかってしまうというデメリットがあります。
・パブリッククラウド
パブリッククラウドとは、GoogleやAmazonなどクラウドサービスの提供者が作ったクラウドをユーザーとして利用する使い方のことです。
構築や運用の難易度が低く、コストを抑えることができる一方で、カスタマイズ性が低かったり、既存のサービスとの互換性がなかったりするデメリットがあります。
・ガバメントクラウド
ガバメントクラウドとは、政府の情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービスの総称のことを指します。
「クラウドネイティブ」とは
DXとクラウド化を繋げるワードとして、「クラウドネイティブ」があります。
クラウドネイティブとは、クラウドを使うことを前提として事業の運営、成長を考えていく思考のことです。
クラウドネイティブになっている状態こそが、クラウド化の観点でいうとDXが推進できている、という状態であるということができます。
クラウドリフト・クラウドシフトを取り入れる
クラウドネイティブな状態を目指すためには、クラウドリフト・クラウドシフトと徐々に移行する必要があります。
クラウドリフトとは
クラウドリフトとは、オンプレミスで稼働する仮想マシンをそのままクラウド上に載せ替える方法です。
移行が簡単な一方でオンプレミスの実行環境がそのまま引き継がれることで、運用管理作業が残ってしまい、完全なクラウド化とはいえない側面があります。
クラウドシフトとは
クラウドシフトは、クラウド上でゼロからシステム、環境を作り直す方法です。
クラウドリフトと比べて初期の工数はかかってしまうというデメリットがありますが、完全なクラウド化を実現することができます。
DX推進にはクラウド活用が必須
結論としては、DX推進にはクラウド活用が必須です。
クラウド化が不十分なクラウドリフトの状態だと、オンプレミスの時のような運用管理業務が残ってしまい、業務効率化が十分に達成されません。
このため、DX推進にはクラウドネイティブの状態を作ることが大切です。
DXでクラウドを取り入れるメリット
具体的にDXでクラウドを取り入れるメリットを解説します。
多くのソフトウェアやストレージを活用できる
パブリッククラウドを活用すれば、クラウド提供企業が構築した多くのソフトウェア、ストレージ、インフラをまとめて活用することができます。
自社で構築すれば多大な工数がかかるこうした仕組みを、定額等で活用できるのがクラウド化のメリットです。
比較的にコストが低い
クラウドは各社に対してカスタマイズされたものではなく、1つのクラウドを多くの企業が利用するビジネスモデルのため、利用者側からすれば比較的コストを抑えて利用できます。
また、ストレージの利用量やデータ通信量などに応じた従量課金制が導入されているクラウドも多く、無駄なコストを支払う必要がないというのもメリットです。
導入から開始までの期間が短い
オンプレミスと異なり、クラウドの場合は大規模なシステム構築をする手間がありません。
多くの場合は契約や申し込みをおこなってすぐに使えるようになります。
このため導入から開始までの期間が短いというメリットがあります。
データ共有しやすくなる
クラウド上で作業やデータを一元管理することで、データ共有がしやすくなります。
たとえば、Google Workspaceのスプレッドシートは共同編集が可能な上、共有もリンクを送るだけで簡単にできます。
DXでクラウドを取り入れるデメリット
続いて、DXでクラウドを取り入れるデメリットを解説します。
セキュリティ強度は運営会社任せになる
クラウドを利用するということは、自社のデータや開発の基盤がクラウド提供会社に依存するということです。
このため、セキュリティなどは提供会社任せになってしまいます。
インターネットを利用できる環境が必要になる
クラウド化は、当然インターネットを利用できる環境が必要です。
このため、ローカルストレージと違ってインターネットに接続されていない状態ではデータにアクセスすることはできません。
定期的に利用料が発生する
最終的な金額はクラウドの方が安くなることも多いですが、毎月定額で利用料がかかってしまう、というのはオンプレミスと比べたクラウドの1つのデメリットです。
オンプレミスに比べるとカスタマイズ性が低い
自社のためにカスタマイズされたオンプレミスの環境よりも、複数者に提供されることを前提としたクラウドの方がカスタマイズ性が低く、自社にとっての機能が劣る場合があります。
DXでクラウドを活用した事例
続いて、DXにおいてクラウドを活用した事例を紹介します。
製造業界
製造業界においては、トヨタがマイクロソフトに加え、アマゾンともクラウドを通じた関係性を深めて、車のDXに取り組んでいることがわかります。
ゲーム業界
ゲーム業界においては、スマホゲームのパイオニアであるガンホーが、AmazonGameliftというクラウドを活用して、マルチプレイのマッチングシステムの運用をおこなっていることが明らかにされています。
参考: 世界中で遊べるマルチプレイゲームのインフラに Amazon GameLift を採用 高度なマッチメイキングにより、優れたゲーム体験を創出
食品業界
食品大手のはごろもフーズでは、移行コストをなるべく少なくしながらクラウド化を実現しています。
参考: INSネット廃止を見据え次世代EDIシステムへ 食品企業が行ったスムーズな移行法とは?
まとめ
DXにおいて、サービスの利用や、開発の基盤をスムーズにするためのクラウド化はもはや必須です。
セキュリティやカスタマイズ性などの課題は残るものの、導入や運用の簡便さを加味すると、優先度高く導入するべき施策です。
一方、いきなり完全クラウド化することも難しいため、その場合はクラウドリフト・クラウドシフトを徐々に進めていくのが賢明です。