最終更新日 2024/10/15
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社外取締役にはどのような役割が期待されているかご存知でしょうか。
社外取締役には、社内業務の監督だけでなく、経営に関するアドバイスやトラブルの対応など、様々な役割が期待されています。
社外取締役は客観的な視点を持つ存在として重要なポジションであるため、社外取締役を選定する際は、慎重に選ぶことが大切です。
今回の記事では、社外取締役と社内取締役の役割の違いや導入をする上でのポイントについてご紹介します。
目次
️社外取締役とは
社外取締役とは、社内の人員ではなく、外部から採用する取締役のことです。
社内業務の監督や経営に関するアドバイスなどの業務を行いますが、社外取締役には第三者としての視点が求められます。
日本取締役協会が2021年8月に実施した「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査」によると、独立社外取締役、および社外取締役を選任している企業は99%を超えることが明らかになっています。
会社法で義務付けられている
社外取締役は、該当する企業においては、会社法で設置することが義務付けられています。
会社法の第327条では、社外取締役を設置する義務のある会社を以下のように定めています。
- 公開会社
- 監査役会設置会社
- 監査等委員会設置会社
- 指名委員会等設置会社
会社法が改正される前は、社外取締役を設置しない理由を述べれば同取締役を設置しなくても問題ありませんでしたが、改正後からは上記に該当する会社に対して、社外取締役を設置することが義務付けられています。
会社法で義務付けられていることも考慮すると、社外取締役の必要性がわかるでしょう。
経済産業省が社外取締役の在り方を新たに策定した
経済産業省はコーポレートガバナンス改革を推進しており、2020年7月31日に「社外取締役の在り方に関する実務指針」を策定しました。
コーポレートガバナンス改革とは、企業経営を管理監督するシステムを改善しようとする戦略のことです。
社外取締役の役割を再定義し、実務的な役割を遂行するための取り組みもコーポレートガバナンス改革に含まれています。
コーポレートガバナンス改革の取り組みを強化していくことで、企業の持続的な成長を目指しています。
社外取締役は、コーポレートガバナンス改革をしていく上で、大切な存在です。
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️社外取締役の役割
社外取締役に期待されている役割は、何があるのでしょうか。
ここでは、社外取締役の役割をご紹介します。
社内業務の監督
社外取締役には、社内業務を監督することが期待されます。
これは、第三者の視点から、会社経営などを監視する役割です。
社外取締役の役割に関しては、以下のような記載があります。
「特に、社外者として経営陣から独立した立場から、経営(経営陣による業務執行)の監督を行う役割が期待されている(一部省略)。」
社内取締役とは異なり、社外取締役には客観的な視点が求められていることがわかるでしょう。
社内業務において、社内の都合等に左右されずに、監視する役割があるのです。
経営に関するアドバイス
社外取締役には、事業戦略や経営に関するアドバイスが求められます。
経営に関する専門知識を持つポジションとして、戦略やプランの内容を確認する役割です。
業務を直接遂行する訳ではないため、社外取締役はあくまでアドバイスやサポートを行う位置付けになります。
企業によっては、社内取締役に重要事項を決定する際の承認を行う役割を与えている会社もあります。
企業によって、社外取締役に求めるものも異なるため、社内で社外取締役にどのようなことを求めるのかを明確にすることも大切です。
トラブルの対応
社外取締役の役割の一つとして、トラブルの対応が挙げられます。
会社内でトラブルが生じた際、トラブルの内容によっては社外取締役が直接責任を取らなくてはならないケースがあります。
例えば、取締役の故意や過失によってトラブルが生じた場合や、他の取締役に対する監督義務を遂行できなかった場合などです。
このため、損害賠償責任の金額を役員報酬の2年分に制限する「責任限定契約」を結ぶ社外取締役も多く存在します。
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️社外取締役と社内取締役の役割の違い
社内取締役だけではなく、社外取締役を設置する必要があるのはなぜでしょうか。
ここでは、社外取締役と社内取締役の役割の違いをご紹介します。
客観的な視点を持つことができるか
社外取締役と社内取締役の大きな違いは、客観的な視点があるかどうかです。
会社法の改正によって、社内取締役の設置が義務付けられた趣旨は以下の通りです。
「わが国の資本市場が信頼される環境を整備し、上場会社等については、社外取締役による監督が保証されているというメッセージを内外に発信するため、会社法において、上場会社等には、社外取締役を置くことを義務づける」
社内取締役は、基本的に社内から適任者を選定しますが、社外取締役は外部から採用する取締役であるため、社内の内情などに影響を受けずに、信頼性の高い視点を保つことができます。
業務執行の権限があるか
原則として社外取締役には業務執行の権限はありませんが、社内取締役には業務執行の権限があります。
意思決定をスムーズに行うために、経営に携わる取締役と執行に関わる取締役を分離する企業が多いためです。
ただし、要件によっては社外取締役への業務執行の委託が認められているケースがあります。
社外の要件に直接的に関与しない範囲であれば、社外取締役が活動範囲を広げることが可能なのです。
業務執行の権限等を考慮し、社外取締役の業務範囲を決めるようにしましょう。
️社外取締役の設置は必要?
そもそも社外取締役の設置は必要なのか気になる方もいるのではないでしょうか。
実際に、社外取締役を設置しなくてはならないケースもあります。
社外取締役の設置が義務づけられている会社は、以下の通りです。
- 公開会社
- 監査役会設置会社
- 監査等委員会設置会社
- 指名委員会等設置会社
上記に該当しない場合は、必ずしも社外取締役を設置しなくてはいけない訳ではありませんが、以下のような特徴がある企業は、社外取締役を設置するとメリットを得やすいでしょう。
昔からの会社の文化が根付いている場合
昔からの会社の文化が根付いている企業の場合、社外取締役を設置することで新たな視点から会社の経営システムを見直すことができます。
市場は著しく変化し、トレンドや消費者の動向についていけないと、競合企業に勝つことができません。
市場の知識や革新的なアイデアを持っている社外取締役を取り入れることで、経営の在り方を見直しながら、企業を成長させることができます。
このような企業は、経営者が伝統を重視している可能性が高いため、経営者の考え方を尊重しながらも、社外取締役を設置するなどの変化を起こすことが大切です。
外部のノウハウを活用したい場合
外部のノウハウを社内に取り入れたい企業は、社外取締役を活用すると良いでしょう。
新規事業を考える際や、経営方針を決定する際、企業のノウハウが不足していると会社を成長させることが難しいです。
このような際に、専門的な知識を兼ね備えた社外取締役を設置することで、企業の不足している知識をカバーすることができます。
業界での経営経験がある、グローバルマネジメントの経験があるなど、企業のニーズに合わせて、スキルや実績のある社外取締役を選定することが大切です。
️社外取締役の導入時にミスマッチを起こさないためには?
社外取締役を導入する際には、いくつか注意点があります。
ここでは、社外取締役の導入時にミスマッチを起こさないためのポイントをご紹介します。
人脈に頼らない
社外取締役を選定する際は、人脈に頼らないことが大切です。
第三者としての視点が重要視されるだけでなく、実績やスキルで自社に適した人材かどうか、正当な判断を行う必要があります。
例えば、社外取締役を判断するにはこれまで経営に携わったことがあるか、課題認識能力はどれくらいあるかなどが、ポイントになります。
人脈で社外取締役を採用すると、実績やスキルを見落としやすいため、注意が必要です。
書類や面談だけで決めない
社外取締役を求人募集する場合、書類や面談だけで選考してしまわないように、注意が必要です。
しかし、相互の徹底した意思の確認ができない可能性があるため、書類や面談のみでは、ミスマッチが起きる可能性があります。
ミスマッチを減らしたい場合、顧問紹介サービスを活用することも有効です。
顧問紹介サービスは、企業側が求める人材と、専門知識のある人材をマッチングするサービスです。
相互のニーズを考慮した上でマッチングするため、ミスマッチが起こりにくい特徴があります。
就任後の活動に近い活動を事前に行ってもらう
トライアルとして、就任後の活動に近い活動を事前に行ってもらうと良いでしょう。
書面上だけで確認できる情報では図りきれない、会社との相性や実力を判断することができます。
スキルや経験がある候補がいた場合も、会社の考え方や方針と大きくずれている場合は、将来的にすれ違いが起きてしまう可能性があります。
自社に適した人材であるか判断するために、事前に実際の働きぶりを確認しましょう。
️社外取締役を選任する際の主な要件
社外取締役を選任する際は、要件を満たしているか判断する必要があります。
以下で、社外取締役を選任する際の主な要件についてご紹介します。
当該会社・親会社・子会社の取締役でないこと
社外取締役は、当該会社、親会社、子会社の取締役以外である必要があります。
つまり、当該会社やグループ会社の経営に直接関わりのない人材を選定する必要があります。
仮に、当該会社、親会社、子会社から社外取締役の適任者を選定する場合、社外取締役に求められる客観的な視点や見解が欠けてしまう可能性があります。
巨額の損失隠しなどの不祥事を起こさないためにも、公平な立場から状況を判断できる外部の存在が必要なのです。
取締役の配偶者または二親等以内の親族でないこと
取締役の配偶者、二親等以内の親族は、社外取締役になることができません。
取締役に直接関わりのある配偶者や親族を社外取締役として設置してしまうと、客観性を損なってしまう可能性があります。
取締役の両親や祖父母、子ども、子どもの配偶者、兄弟姉妹などの親族は二親等以内の親族に該当します。
社外取締役は身内ではなく、外部から採用する必要があるのです。
過去10年間当該会社で業務を執行していないこと
社外取締役の要件として、過去10年間当該会社で業務を執行していないことも挙げられます。
当該会社で勤務している社員が取締役に選定された場合、社外取締役ではなく、社内取締役の扱いになるので注意が必要です。
過去10年以内に当該会社の業務に携わっている場合、内部情報を知っている可能性が高く、外部としての役割が薄れてしまいます。
過去に当該会社の業務に関わっていた場合、10年間関わりがない必要があることを知っておきましょう。
社外取締役の役割とは?上場企業は会社法で設置が義務化されている?
️社外取締役を選任する際は会社法を確認することが大切
社外取締役を選任する前に、会社法を確認することが大切です。
社外取締役の要件に関しては、以下のように会社法2条15号で定められています。
- 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
- その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
- 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
- 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
- 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。
(引用:会社法)
令和元年に会社法が改正され、一定の条件を満たす会社に対して社外取締役を設置することが義務付けられました。
次章で詳しくご紹介します。
️社外取締役を選任する際のポイント
社外取締役を選任する際は、自社にとって良い影響を及ぼすことができる人材が良いでしょう。
ここでは、社外取締役を選任する際のポイントをご紹介します。
自社の課題に適した人物像を設定する
社外取締役を選任する際は、自社の課題に適した人物像を設定するようにしましょう。
まずは自社の課題を明確化し、課題改善のために必要なスキルや知識を洗い出します。
例えば、海外事業の展開を考えている企業の場合、グローバルビジネスの経営に携わった経験のある人材を選定し、分野に特化した経営に関するアドバイスを受けることが有効です。
また、候補者の考え方や会社との相性についても、見極めることが大切です。
お互いのニーズがマッチすれば、ビジネスパートナーとしての良好な関係性を築くことができるでしょう。
複数のチャネルで募集をかける
社外取締役を募集する際に、複数のチャネルを利用することが大切です。
利用するチャネルが少ないと、募集できる人材の幅が制限されてしまいます。
求人紹介のサイトやSNS、顧問紹介サービスなど、活用できるチャネルは様々です。
短期間で効率的に候補者を集うためにも、複数のチャネルを利用すると良いでしょう。
社外取締役に期待する部分を明確にする
社外取締役を選任する際は、社外取締役に期待する部分を明確にしましょう。
社外取締役への要求が多くなってしまうと、マッチングする人材を見つけるのが難しくなる可能性があります。
業界での経験、取締役としてのスキルなど、選定時に必要な条件を設定し、複数の候補者の中から自社に合った人材を絞ると良いでしょう。
あらかじめ複数の候補者を残しておくことで、取締役のバランスを見ながら最適な人材を選定することができます。
現役の社外取締役に意見をもらう
また、現役の社外取締役に意見をもらうことも有効です。
実際に社外取締役として働いている人を対象にヒアリングを実施し、選定時に大切なポイントを教えてもらうことも良いでしょう。
例えば、どのように応募を探したのか、選考内容や報酬水準はどうだったのかなど、詳しい事情を知ることができます。
現役の社外取締役に意見をもらい、自社にとって良い影響を及ぼすことができる人材を選任しましょう。
社外取締役の報酬相場はどのくらい?大企業と中小企業で報酬が異なる?
️まとめ
社外取締役の役割は、社内業務の監督や経営に関するアドバイス、トラブルの対応などが挙げられます。
もし、社外取締役の設置を検討している方は、専門領域の知見があるだけでなく、実績があるかどうかを確認することが重要です。
しかし、社外取締役の設置が初めてのため、不安な方も多いのではないでしょうか。
そのような場合は、顧問紹介サービスを活用することをおすすめします。
顧問紹介サービスに在籍している顧問は、各専門分野で実績があるため、企業によって最適なアドバイスやサポートを行うことができます。
それぞれの顧問紹介サービスを比較検討し、自社に良い影響を及ぼすことができるサービスを活用しましょう。
監修者情報
パートナー企業開発部門を経て、金融業界向けコンサルティングセールス業務に従事。
その後、ヘッドハンティングされWeb系スタートアップ企業の取締役等を歴任。
Webコンサルティングやメディアを運営するアークワードコンサルティング社を創業。